060:真相

真相 (双葉文庫)

真相 (双葉文庫)

横山秀夫の短編集。五編からなる。
どれも横山秀夫らしくもの悲しい話。
十年もの昔殺された息子の、犯人逮捕によって解き放たれる信じられない一面。そして、そのことによる家族内の秘密も暴露する。
町長選に絡む、昔の罪。人は己の後ろめたさによって滅ぶ。
人生で一番嬉しかった瞬間が、友人が死んだ時。いつまでも晴れない過去を引きずって生きるということ。
ちょっとした出来心で起こした罪。法律上の刑期は過ぎても、人の目からは逃れられない。人がつらいのは底辺にいることよりも、今後も底辺に居続けなければいけないという未来への希望が持てないことの方なのだ。

短辺ながらもどれも一工夫してあり、最後で一ひねりしたオチなどがあり安心して読みすすめることができる。最後の物語なんかもっと長物にしたらおもしろいと思うけど短編だからしょうがない。でも、この短編集の最後の話としてはふさわしい物語でしょう。ラスト以後どうなるかは、さっぱりわからないし。余韻を楽しむことができる。