039:武装解除

武装解除  -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)

武装解除 -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)

紛争屋の本。
シエラレオネ東チモールアフガニスタン。失敗国家、紛争地域。そのような現場で活躍する人々、紛争がメシのたねであるから紛争屋と呼ばれるらしい。
たいていの人なら食うものに困らない日本に生まれながら、危険な地域に自ら*1赴く人たちってのがよくわからない。私は、とりあえず今日食えれば満足だし、とりあえず生きていればなんとかなるかなー、って思い日々すごしている。でも世の中には、とりあえずっていう生き方ができない人がいるんだろうな。
傭兵のお仕事―The Battle Field Bibleの高部正樹さんとか。なんでそんな生き方なのか、なんてのはさっぱり理解できないですが、そういう人達の話を聞くのはすごい楽しい野次馬の私です。
周辺国がミサイルぶっ放しているご時世に野次馬も何もないもんだ、とは思うんですけどねー

一番重点がおかれていたのはDDRの話と、軍事力の話。
DDR武装解除、動員解除、社会再統合の総称で、紛争解決のための一手段です。なぜ紛争が起きるか、ってのは色々ありますが、意見利害がわかれる集団があって、それぞれに実行できる『武力』がある状態でなければ、いくら紛争の種だけあっても悲惨な話にはなりません。ゲリラが子どもを誘拐して兵士にするとかね。
紛争を起こす主体である武装集団を解散させて、解散させただけでは元兵士があふれて社会情勢が悪化しますから、一般社会に復帰できるよう訓練します。んで、暴力装置は国家が独占して、地域間の紛争を終結させようって話。ここらへんカラシニコフ読んでるとさらにおもしろい。

軍事力のお話でいえば、暴力を国家が独占することの重要性ってのと、紛争を解決するために乗り込む国連の武力らへん、というのも読み取ることができておもしろい。
まあ、国家の話は色々難しいんで私は投げすてますが、PKOについては日本の話もわんさか出てきて興味深い。著者の思想はいわゆるサヨクであるわけなんですが、紛争屋の現場を知っている身として、何が何でも自衛隊の派遣に反対という思考ではなく、世界平和を希求する日本国憲法のもと、平和の創出としての派兵*2を、というのはそこらへんが落としどころなのかな。と考えさせられた。

アフリカの失敗国家とかアフガンが大変大変という話は良く聞くのだけど、いまいちどんな状況か実感がわかないという人には、おすすめの本だと思う。実感はわくかどうかはわからないけど、どえらい世界だというのはよくわかる。

はてな年間100冊読書クラブ039/100

*1:私から見れば喜々として

*2:他の軍に守ってもらう派遣ではなく、現実的な抑止力としての派兵